形成外科とは

形成外科

形成外科は体の表面組織に生じた外傷や変形、欠損、先天異常、外見的な不満足に対して是正を図る専門診療科です。例えば顔の骨折によって骨部が治癒した後に皮膚が元通りに治らなかったケース、交通事故によって皮膚が剥がれてしまったケース、やけどの後遺症でケロイドが起こったケースに対し、専門的な手技を用いて治療を進めていきます。これにより、身体機能だけでなく形態的にもより正常に、より美しくすることが出来ますので、生活の質の向上が期待できます。顔の外傷・骨折、やけどや傷あと、あざ、皮膚潰瘍、腫瘍、先天的な外表異常の治療、欠損した組織の再建などを希望される方は形成外科をご受診ください。

整形外科や美容外科との違い

形成外科は、よく整形外科と間違われるのですが、両者には違いがあります。整形外科は体の芯となる骨・関節などの骨格系、およびそれを取り囲んでいる筋肉や腱、神経などの運動器を扱う診療科です。これに対し、形成外科は主に全身の体表(皮膚・皮下組織)、および顔の骨の治療をする診療科です。

また、美容外科は広い意味での形成外科の一分野ではありますが、美容外科は正常な部位をより理想的な形態にすることを目的とし、主に自由診療で対応しています。すなわち、主に保険診療で正常な状態に戻すことを主眼に置いている形成外科とは一線を画しているのです。

当院の形成外科について

当院では、形成外科で扱う疾患のうち、主に診療所で対応している外傷や皮膚腫瘍の治療を行っています。乳幼児から年配の方まで、幅広い年齢層の方を対象に、治療のタイミングを見極め、必要な手術にも対応していきますので、安心してご受診いただければと思います。なお、早めに治療を開始することで大掛かりな手術とならずに済むケースも多いので、早めの受診をお勧めいたします。

形成外科で扱う主な疾患

切り傷

切り傷とは、文字通りガラスや刃物など鋭い器物によって皮膚がスパッと切れてしまった傷のことです。傷口が直線的に切断されているので、通常は周辺組織に大きな影響が及んでいません。切り傷は日常的に誰もが経験しうるのですが、その重症度は様々です。放置していても特段の問題が生じないものから、骨まで達しているケース、神経を損傷しているケースなどもあり、後遺症が起こることもあります。血管や神経、腱の完全な断裂をきたしたケースでは、緊急に縫い合わせる処置が必要になることもあります。

また、土やサビなどが傷口に入ってしまった場合は、破傷風などの感染症の恐れが生じてきます。異物を取り除いた後、必要があれば抗生剤を投与して感染症を予防します。出血が多い場合には、縫合処置も行います。糸で縫わずに、創傷閉鎖用の滅菌テープや医療用のホチキスを使って、患部を固定するケースもあります。

擦り傷

擦り傷は、例えば固いコンクリートの上などで転倒し、膝などの皮膚の一番外側にある表皮がこすり取られ、はがれた状態になった怪我です。皮膚の表面を擦ったことによって炎症が起こっていますし、皮膚の浅い部分には神経が密に走っているため、切り傷よりもむしろヒリヒリとした痛みが続きがちです。適切な手当をしなければ、細菌などに感染して化膿することがありますので、軽視せずに医療機関を受診し、患部の汚れを水などで洗い流したうえで被覆材による治療を受けるようにしましょう。

やけど

やけどは高温な物体(熱湯、油、アイロンなど)に皮膚が接触することによって引き起こされる外傷であり、日常生活においても非常によく見られます。やかんやポットの湯、コーヒーやお茶、てんぷら油、カップ麺の湯などによる高温の液体によるやけどが多く、ストーブやアイロンなどへの接触によるものが、これに続きます。

やけどをしたら、水道水などですぐに冷やすことが肝心です。これにより熱による組織損傷が深くなることを防ぐだけでなく、受傷した部位の炎症を抑え、痛みをやわらげることができます。こうした応急処置を行い、出来るだけ早く医療機関を受診して下さい。なお、やけど部分に余計なものを塗ると、かぶれや細菌感染を起こすことがありますので、患部に薬などを塗らずにお越しください。

やけどが広い範囲にわたる場合は、やけどをした部分の炎症によって血管内の水分が移動して減少し、循環障害から血圧低下を来たす場合があり、全身管理が必要になります。こうした場合は、入院施設のある医療機関への受診が必要です。やけどの部位や深さにより多少異なってきますが、大人では中等度熱傷と呼ばれる2度のやけど(表皮の下の真皮に達するやけど)が体表面積の15%以上を超えると、入院加療の適応になります。

陥入爪・巻き爪

巻き爪は、足の指にある爪の両端の先端部が大きく内側に湾曲した状態です。前方から見ると爪がアーチ状になっているので、知人などに確認してもらえば巻き爪状態か否かは分かります。負担のかかりやすい親指の爪がなることが多いのですが、その他の爪も巻き爪になることがあります。

巻き爪が進行すると、曲がった爪の両端が皮膚に食い込んでいき、陥入爪の状態になります。炎症や痛みを伴うことが多く、悪化すると皮膚が化膿して歩行困難などを引き起こすようになります。また、巻き爪の痛みから足をかばおうと、いつもとは違った歩き方をしてしまうために、足首や膝、腰にも負担がかかり、捻挫や膝痛、腰痛の原因になるケースもあります。

陥入爪の治療に関しては、爪が皮膚に食い込まないようにすることが重要となるので、ワイヤーなどを用いて爪を持ち上げる治療法や、食い込んでいる爪を切除する治療法がよく行われます。具体的には、爪の先端に形状記憶ワイヤーを挿入して矯正する「マチワイヤー」、爪の根本にワイヤーをかけて矯正する「VHOワイヤー」、内側に捲くれ込んだ爪床や爪母の部分をメスで切り取る「鬼塚法」、巻き込んだ爪のみを切除し、爪床と爪母に約90%のフェノールを染み込ませた綿棒で爪母を焼いてしまう「フェノール法」などがよく行われます。

ほくろ

ほくろは、正式には色素性母斑と言い、皮膚の一部にメラノサイトという色素細胞が集まって出来た母斑の一種です。黒っぽい斑点状のものが見られますが、通常は放置しておいても特に問題は生じません。しかし、ほくろとよく似ている皮膚病変として、悪性黒色腫や有棘細胞腫などの皮膚がんありますので、これらとの鑑別が大切となります。

特に悪性黒色腫はリンパ節に転移しやすく、進行の速いことが多いため、とても怖れられています。短期間で急に大きくなったり、色が濃くなったり、色素がまわりの皮膚に染み出してきたり、硬化してきたような場合は、一刻も早く医療機関を受診するようにして下さい。

ほくろを積極的に治療する場合は、ほくろの形状や大きさ、生じている場所などを考え合わせた上で切除します。いくつかの方法がありますが、このうち「くり抜き法」は、医療用のパンチのような特殊な道具やメスを使ってほくろを円形にくり抜き、除去する方法です。除去後は欠損した部分の組織が自然に盛り上がり、傷は塞がります。血流の多い部分、特に顔は皮膚の修復力が強いので、このくり抜き方が適しています。

また、皮膚の表面から突起しているようなほくろの場合、マイナス196℃の液体窒素を使用してほくろを焼き切る「凍結法」を検討します。この他、メラニン色素に選択的に作用するレーザー治療も行われます。悪性化の怖れの無い場合には有効なのですが、母斑細胞は残るため、レーザー治療を繰り返しても色を完全に消失させることは困難です。

皮膚腫瘍(日帰り手術)

皮膚に生じたできもののことを皮膚腫瘍と言います。皮膚組織の一部が病的に変化し、増殖したものなのですが、増殖が穏やかで特に治療をしなくても命の危険が生じない良性腫瘍と、迅速な対応が必要な悪性腫瘍に分けられます。

当院では、皮膚腫瘍に関する検査を行い、良性腫瘍であった場合は主に日帰り手術で対応いたします。検査の結果、悪性腫瘍が疑われる場合は、当院と提携している医療機関の皮膚科をご紹介いたします。

日帰り手術の流れ

問診・診察
  • まずは問診表にご記入いただき、手術を行うに際して問題が起こらないか確認いたします
  • 皮膚科で専門に使われるダーマスコピーなどの医療機器を使用し、皮膚腫瘍の状態を調べます

手術前の検査
  • 手術を行う場合は、血液検査を行うとともに、超音波検査などを通じて皮膚腫瘍の状態を確認いたします。
  • 必要に応じ、病理検査を行うこともあります。

手術
  • 局所麻酔を打ってから、腫瘍の摘除を行います。
  • 手術時間は、ケースによっても異なりますが、概ね20分前後です。
  • 手術の終了後は、そのままご帰宅いただけます。
  • 手術当日は、入浴や洗顔、洗髪などをお控えください。

手術後の対応
  • 手術で摘出した腫瘍の内容などで異なりますが、手術後の指定日に来院いただき、経過を確認します。
  • 抜糸に関しては、4~8日程度で行えますが、もう少し様子を見ることもあります。

※その他、ご不明な点がございましたら、当院までお気軽にお問い合わせください。