皮膚科とは

皮膚科

皮膚科は、文字どおり皮膚に生じる様々な病気を診察し、必要な治療を行なう診療科です。顔や手足、胸、背中など、全身のありとあらゆる部位に起こる病変が対象であり、皮膚科で扱う疾患は500種を軽く超えるとも言われます。ニキビや水虫、魚の目など、一般的には重症化しない病気も多いのですが、なかには悪性黒色腫、有棘細胞がん、基底細胞がん、悪性リンパ腫など、命に関わる病気もあるので注意が必要です。原因に関しても多種多様であり、外的因子によるもの、内的因子によるもの、老化によるものなどがあります。皮膚科治療においても、もちろん原因を把握することは大切なのですが、まだ原因のつかめていない疾患も、しばしば存在します。

皮膚の異常は当院までご相談ください

皮膚は内臓を包み込んでいる鎧のようなものですから、内臓や諸器官の発する病気のシグナルがよく見られます。内臓をはじめとする体内の状態や血行の調子、ホルモンバランス、ストレスの有無などが複雑に絡み合い、皮膚症状として現れてくることが少なくないのです。小さな皮膚病変を検査しているうちに、思わぬ内科的疾患が見つかるケースもありますので、皮膚に異常が見つかった際は早めに当院までご相談ください。

皮膚に生じる主な症状

  • 皮膚に痛みや痒みがある
  • 皮膚がただれている
  • 皮膚に斑点や吹き出物がある
  • 皮膚が赤くなって、白いカサカサが付着している
  • 皮膚が厚くなり、ときおり痛みがある
  • 皮膚を触ると熱くなっている
  • 手の指先が白くなり、こわばっている
  • 足の裏や指に黒いほくろのようなものが出来ている

一般皮膚科で扱う主な疾患

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、痒みの伴う湿疹が発生し、良くなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。皮膚症状が、年齢によって変化するのも特徴です。原因については、はっきりとは分かっていない要素もあるのですが、遺伝的な体質に環境的要因が絡み合って発症すると考えられています。多くの患者様は、皮膚が乾燥しやすい素因とアレルギーを起こしやすい体質を併せもっています。

治療において一番大切なのは、患者様の症状をきちんと見極め、適正な量の薬物を選択することです。アトピー性皮膚炎の外用薬としては、主にステロイドの塗り薬と免疫抑制薬の塗り薬を検討します。ステロイドの塗り薬は、炎症を強く抑える作用を有し、免疫抑制外用薬は、過剰な免疫反応を抑えます。これらの薬剤を適切に使うことで、症状を早く改善し、良い状態を維持することが可能になります。

また、痒みを抑えるために抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を併用することもありますし、他の治療でなかなか良くならない重症の患者様にはステロイド薬の飲み薬やシクロスポリン(免疫抑制薬)の飲み薬を追加することもあります。

湿疹

湿疹は、皮膚科を受診される患者様に、とても多く見られる症状です。ブツブツや小さな水ぶくれ、赤みなどが混ざって現れ、強い痒みを伴うこともあります。そのため、ついつい掻いてしまいがちなのですが、絶対に掻きむしってはいけません。爪などに付着している細菌が患部から侵入し、症状が悪化して一層かゆみが強まるからです。まずは痒みや炎症を抑える薬を上手に使い、こうした悪循環を断ち切る必要があります。

湿疹は慢性化すると治りにくくなりますので、症状がしばらく続くようなら、皮膚科を受診し、ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬によって炎症の悪化を食い止めるようにしましょう。かゆみが強いときは、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬も処方しますし、湿疹の状態によっては抗生物質などによって細菌感染の治療を行うこともあります。

じんましん

じんましんは、少し盛り上がった発疹が皮膚に広範囲に見られるのですが、数分~24時間ほど時間がたつと、何でもなかったかのように消えていく皮膚疾患です。そして、また暫くすると、再び発疹が出てきます。強い痒みを伴うことが多いのですが、これに加えてチクチクとした痛みや熱く焼けつくような痛みを伴うこともあります。4週間以内に治るタイプを急性じんましん、それ以上の期間にわたって断続的に発症するタイプを慢性じんましんと呼びます。

じんましんの原因は、食べ物や内服薬、細菌やウイルスの感染など様々で、検査としては皮内反応や血液検査などを行います。しかし、原因が特定できないことが少なくありません。治療にあたっては、主に抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を使用します。こうしたお薬を飲むことにより、多くは数日で症状が治まりますが、自己判断で服用を止めてはいけません。必ず医師の指示に従って飲み続け、症状が再発しないようにすることが大切です。

水虫

私たちが生活している環境の中では、非常に多くの種類のカビが存在しており、お肌に付着することは日常的に起こります。そうしたカビの中には、納豆菌や乳酸菌のように健康増進につながるカビ、いわゆる「役に立つカビ」もありますが、他方において、人間に病気をもたらすカビもいます。水虫の原因となる水虫菌(白癬菌)もその一つです。

この水虫菌が皮膚の奥に入り込んで増殖を始めようとすると、私たちの体はカビを追い出そうとして激しく抵抗します。この際に炎症が起こり、一般的には痒みを感じるようになるのです。しかし、しばらく経つと、水虫菌に対して抵抗しなくなりますので、炎症や痒みも収まっていきます。このように水虫が慢性化してしまうと、お薬が効きにくなります。水虫は急性期のほうが治療効果が高いので、足に痒みを感じたときは、お早めに皮膚科を受診するようお勧めいたします。

治療に関しては、まず水虫に効果の高い抗真菌薬を使用します。塗り薬と飲み薬の2種類のタイプがありますので、症状を見極めたうえで選択いたします。爪の中に水虫菌が入り込んだケースでは、薬の成分が患部まで届きにくいので、主に飲み薬を選択します。内服薬は3~6ヶ月の服用が必要となり、経過を見ながら医師が効果を判定します。なお、まれに肝機能障害や貧血などの副作用を招くことがあるため、血液検査で副作用をチェックしながら治療を進めます。

いぼ

いぼは、ヒトパピローマウイルスの感染によって引き起こされる腫瘤の一種です。見た目が気になり、指先などで触って刺激する方も少なくないようですが、そうすると腫瘤が増殖しかねないので注意が必要です。いぼができたからと言って、自分で引っ掻いて治そうとすると、かえってウイルスを撒き散らしてしまう可能性があります。また、いぼのように見えても、実は悪性腫瘍だったというケースもありますので、お早めに皮膚科を受診し、必要な検査を受けることも大切です。

いぼを除去する方法としては、レーザー治療や液体窒素療法などがあります。レーザーは外科的除去法として非常によく行われている手法であり、患部にレーザーを照射して丸ごとくり抜きます。レーザーによる除去では、出血が少なく、痛みも感じにくく、しかも再発の少ないのがメリットです。ピンポイントの除去が可能なので、傷あとも目立ちません。治療期間は、いぼの大きさや個数、種類などによっても差が出てきますが、大抵は3~6ヶ月程度です。

一方、液体窒素療法は液体窒素を患部に当てて焼き切る方法であり、皮膚科では古くからよく行われていました。マイナス196℃の液体窒素で綿棒の先を凍らせ、いぼに押し当てることによって除去します。やけどを人為的に起こして焼き切ってしまう方法なので、人によっては強い痛みを覚えます。処置後は、皮膚がやけどを起こした状態になっているので、傷口から他のウイルスに感染しないよう、十分にケアする必要があります。

たこ・うおのめ

たこ・うおのめは、足などの特定部位に過度の圧力がかかり続けることにより、皮膚が固くなってしまう病気であり、日常的に非常に多く見られます。このうち、たこは皮膚表面の角質が部分的に肥厚したもので、あまり痛みは伴いません。これに対し、うおのめは肥厚した部分にさらに圧がかかって硬くなり、芯をもっているため、歩行時に刺激されて痛みが走るケースがよく見られます。

タコ・ウオノメの治療ですが、根本的な原因は足などに強い刺激がかかることにありますので、刺激がからない生活習慣に見直すことが最も大切です。その上で、痛みの除去を目指します。一般的には、スピール膏を使用して患部を柔らかくしてからメス・ハサミなどを用いて切除します。

とびひ

とびひは、皮膚の中に細菌が入り込むことによって水ぶくれなどが出来る病気であり、人から人へと感染が広がっていきます。特にアトピー性皮膚炎の患者様は、皮膚のバリア機能が低下しているため、とびひにかかりやすいので注意が必要です。掻きむしった手を介して、水ぶくれがあっという間に全身へと広がる様子が、火事の火の粉が飛び火する様に似ているため、「とびひ」と呼ばれるようになりました。

治療に関しては、主に原因菌に効果のある抗菌薬を使用します。症例によっては抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、亜鉛華軟膏なども用い、痒みや炎症を抑えます。とびひは症状が悪化しないうちに治療を始めると効果が高いので、お早めに医療機関にて必要な治療を受けるようにしてください。

ヘルペス

ヘルペスは、特徴的な赤っぽい水ぶくれが唇のまわりなどに発生し、痒みや痛みを伴う疾患です。単純ヘルペスウイルスが原因となり、一度感染すると、神経細胞の中に隠れ潜んで潜伏してしまいます。そして、疲れやストレスなどで体の免疫力が弱っていると、潜伏しているウイルスが再び勢力を取り戻し、暴れ始めるのです。

ヘルペスウイルスは症状が治まっても体内に潜んでいる状態が続きますので、現在のところ退治することは出来ません。そのため、ヘルペスの治療では対症療法的に抗ヘルペスウイルス薬を使用します。飲み薬と塗り薬があり、罹患している部位や症状の程度などによって使い分けます。発疹の出る前にチクチクするなどの予兆が出ることも多く、その時点で治療を始めると、治りが早くなります。

青あざ(太田母斑)

太田母斑は、青色からやや褐色の小さい斑点が額や頬に集まってできた痣であり、女性に多くみられます。出生直後から青あざが目立っている場合と、思春期頃に目立ってくる場合とがあります。放置していても命にかかわるようなものではありませんが、片側の目のまわりやこめかみ、頬などに青あざが出現しているため、美容上の理由などで気にする方も少なくありません。

太田母斑は、一般に自然に消失することはなく、思春期に近づくにつれて色が濃くなる傾向があります。レーザー治療が著効すると言われていますので、青あざが気になるようでしたら、適正な時期に皮膚科を受診されるようお勧めします。

皮膚潰瘍・褥瘡

皮膚潰瘍・褥瘡は様々な要因によって起こりうるのですが、特によく見られるのが、腰部の一部などが圧迫されることによって生じる床ずれです。寝たきりや知覚障害のある高齢者の場合、血流が悪くなっていても寝返りが出来なかったり、そもそも血流が悪くなっていることに気付かなかったりし、褥瘡になりやすいので注意が必要です。栄養状態が悪くて痩せてきたりした方も、圧迫やずれを受けやすくなるので、褥瘡のリスクが高まります。皮下脂肪や骨まで達する重症の褥瘡はいったん発症すると、治癒しづらくなるので、早期の治療が大切です。

治療にあたっては、まず褥瘡を引き起こしている原因を是正することが大切です。寝たきりやの場合、どうしても褥瘡になりやすいのですが、介護者が定期的に体位を変えるなど、皮膚の一部に強い力がかかり続けないよう配慮するようにしましょう。なお、感染症を合併すると生命に関わることもありますので、症例によっては早めに壊死した皮膚を取り除き、抗菌薬などによる治療を開始します。